講評 2026年4月

兼題「花曇」「田楽」

総評に代えて

〇毎月、「草取」「草むしり」の句を多数目にします。これらも季語になっていますので、よく調べてから作句してください。
〇「花曇」は「り」を送らずともいいのです。名詞の季語だからです。
〇「花曇」は天文の季語です。桜の咲き方や散り方をいう必要はありません。
〇「花雲」になってしまっている句が結構ありました。慌てずに、慌てずに。
〇食べ物の季語を用いる場合は、そのレシピを説明してもいい句にはなりにくいものです。同様に、「(その季語が)おいしい」とは詠みません。おいしいからこそ、季語になっているからです。「ほかの人もおいしいと思っている」ことを前提にしてください。これは、他の季節でも同じです。
〇食べ物の季語といえば必ず「舌鼓」。たくさんありました。もっとご自分の言葉で。舌鼓は卒業しましょう。
〇句が三つに切れてしまっている場合(=いわゆる三段切れ)は添削してあります。もとの句と見比べてみてください。
〇「語順が惜しい」と思われる句がたくさんあります。どれを目立たせたいかを考えればおそらく解決することでしょう。

櫂 未知子

2 俳号 和田正尚
飛火野の水の流れや花曇
田楽や小雨に煙る浮見堂

3 氏名 原 恵美
田楽の香(かざ)にさそはれ台所

10 氏名 大北 淳子
半世紀夫と歩みて花曇

11 氏名 今城 照子
花曇り在るのに見えぬ二上山

12 氏名 星野 茂美
田楽の香りが誘ふ暖簾かな

14 俳号 山本厚子
花曇物憂きままに暮れにけり
☆バッハ弾く指もどかしく花曇

この季語では珍しい取り合わせです。荘重な曲、いいですね。

15 氏名 高橋 信治
田楽の味深まりぬ味噌一丁

17 俳号 松本敬香
花曇スカーフの色鮮やかに

19 氏名 石原 佐和子
花曇流るる時に父母思ふ

20 俳号 あらら
花曇り今来た道を振り返る

21 俳号 渡辺 葉月
御灯の薬師本尊花曇
☆花曇今は動かぬ水車かな

さびれてしまった村なのか、それとも全て機械化されてしまったのか。水車がいい味を出しています。

22 氏名 野々村 由喜子
木の芽田楽口にし父を偲びけり

24 氏名 小谷 治子
花曇瀬戸に佇む城址かな
☆田楽や印伝袋やはらかし

触ると思いのほかしなやかな印伝。ささやかな発見をうまく言い留めています。

27 氏名 飯島 正康
朽ちはてし古きベンチや花曇

28 氏名 吉井 さえ子
☆着る人のなき振り袖や花曇
『細雪』の花見のシーンを思い浮かべているのでしょうか。古今の花見の違いを匂わせてくれる句です。

30 氏名 岡村 典子
☆やはらかき堤のつづく花曇
桜といえば堤がつきもの。しかし、「やはらかき」とはなかなかいえません。表現がとてもユニークですね。
田楽を待つ間の風や茶屋のれん

31 俳号 千羽
田楽を見ぬふり通す意地ひとつ

32 俳号 浦崎まゆみ
初めてのローファーを履く花曇
田楽やくるりと回し焦げひとつ

33 氏名 比嘉 啓文
田楽の香ばしさ立つ日暮れ時

34 俳号 円舟
高遠の折り重なりて花曇

35 俳号 小西博子
田楽の串に暖簾の歴史あり

36 氏名 中野 尋恵
田楽や露店に並ぶ人の列

37 俳号 瀬戸の風
屋台から田楽の湯気ふと絶えて

38 俳号 津島まあや
花曇なだらかな道どこまでも

39 俳号 田中和敬
深々と吾子手を合わせ花曇り

41 俳号 文月詩架
花曇一段飛びで駆け上がる

42 氏名 松川 しのぶ
☆花曇布に囲まれミシン踏む
中七がじつに面白い。仕事なのか趣味なのかはわかりませんが、布の洪水といった趣きがあり、楽しく読めます。

45 俳号 平野和江
初参観心落ち着け花曇

47 氏名 山田 真史
源泉の匂ひ包みし花曇

50 俳号 西山レモン
串本の波静かなり花曇

51 氏名 木村 絢子
一湾に船の帆ゆらり花曇
船の帆が風を忘れし花曇

53 氏名 富永 美智子
田楽の味噌の香残る夜は深し

55 氏名 小谷松 直子
花曇姪の挙式の写真届き

58 氏名 松本 孝子
花曇遠くに汽車の音響き

61 氏名 疋田 ちづ子
髪跳ねて中二の孫や花曇
花曇まだ見ぬ先のひかり追ふ

62 氏名 北村 貞子
船頭の若きかけ声花曇
外つ国の親子連れなり花曇

64 俳号 根岸さち
花曇踏切の音遠くまで

65 俳号 古蔵 花音
田楽の匂い辿れば隣なり

67 俳号 西野悦入
早々と弁当展げ花曇
☆はかどらぬ旅の支度や花曇

「はかどらぬ」といいつつも、どこか、弾んだ気持ちの感じられる句です。あれを入れ、これを出し、といった中で旅の気分が高まってゆきそうですね。

69 俳号 輝輝
パンにジャム塗りていただく養花天

74 俳号 雅月
花曇波を蹴立てて小舟ゆく

76 氏名 小田川 浩三
☆花曇静かに灯る街路灯
はやばやと灯がともったのでしょうか。昼なのに夕暮れのような美しさがあります。

77 俳号 古田 啓
花曇手を差し伸べて父偲ぶ

78 俳号 谷ちか子
思い出の品片づけし花曇
花曇先ゆく背中頼もしき

81 俳号 三貴子
☆手を払う歩き始めや花曇
自立の第一歩という感じですね。真剣な幼い顔が目に浮かぶようです。

85 俳号 足立ひでみ
家周りの掃除をするや花曇

86 氏名 小林 茂之
さまざまな古墳のかたち花曇
☆江ノ電の音の弾力花曇

「江ノ電に触れそう」という句はたくさんあります。しかし、この句の中七のような表現は初めて目にしました。ふくらみのある、たくましい作品だと感じます。

89 俳号 伊崎宏子
診察の結果覗くや花曇

90 俳号 水間水仙
花曇志士と眺むる桜島

91 氏名 桑原 堆子
☆花曇すれ違う人華やいで
曇天でも街をゆく人々の表情や服装がどんどん華やかになってゆきます。それは桜がもたらす一種の魔法なのかも。

92 俳号 國井あき
佃島の上総堀井戸花曇

95 氏名 飯田 朱美
花曇ペダルふみふみ図書館へ

96 俳号 みーたま
亡き夫の褪せたハンケチ花曇

103 俳号 徳永恵楓
花曇杖つく夫と歩を合わせ

105 俳号 杤尾まほ
境内の玉砂利鳴れり花曇
☆バス停の短き会話花曇

連れ立ってゆくのではなく、たまたまバス停で会った知人。「短き会話」にさり気ない、しかし大いなる発見があります。

108 氏名 多田 茂樹
☆特急が遠離り行く花曇
あっという間に過ぎてしまう特急電車。重い車両が曇天をついてゆく逞しさがあります。
国道を半日辿る花曇

110 俳号 稲川 優子
山鳩の声ほうほうと花曇り

111 氏名 小野 千早子
波音の余韻残りて花曇

112 氏名 吉田 鈴子
花曇亀の背に乗る亀のゐて
☆友を待つ駅の木椅子や花曇

木の椅子ですから、どことなくひなびた駅舎なのでしょう。声高ではないときめきのある作品です。

113 俳号 塩田みどり
本日はグァテマラを入れ花曇

114 俳号 聖子
田楽にのうがき長き店主かな

115 氏名 細川 京子
藍染の旧家並びぬ花曇

117 氏名 駒木 典子
茹卵いびつに割れて花曇

121 俳号 十勝晴尋
田楽や外れ馬券の紙ひらり

122 俳号 西村せつ子
花曇小舟波打つ大井川

123 俳号 橋本千蓼
花曇今朝の鳥海山近く見ゆ
花曇結納品と福井まで

124 俳号 浦嶋和子
紙ひこうき宙に溶け入り花曇

125 氏名 千田 洋子
☆花曇孫の口笛上手くなり
孫の成長を知った口笛。おそらくはどこか誇らしげなのでしょう。耳で成長を感じ取ったよろしさがあります。

129 氏名 穴繁 惠美子
茶筅振る淡きむらさき花曇

131 俳号 長岡純子
☆故郷より届く乾物花曇
なまものではないことがとてもいい。口にするまでに手間がかかる乾物ですが、それも故郷を再確認する楽しさでしょう。

133 氏名 青木 豊江
撥打てば三味のほこりや花曇
養花天影をとどめぬ鳥の声

134 氏名 満田 純代
花曇通夜へと急ぐ車窓から

135 俳号 美紗
花曇恩師の歌は胸のなか

136 氏名 田邊 法子
花曇日時計時をわすれをり
花曇数珠の置かれし座卓かな

138 俳号 桜井 伸
☆田楽の串を地面に刺しにけり
味噌ばかりが出てくる田楽の投句の中で「この手があったか」と思わせてくれた作品。田舎っぽさ、少しワイルドな感じがとてもいい。
☆猫二匹新しく来ぬ花曇
最初は借りてきた猫状態なのかもしれませんね。幸せになれそうな猫さん達ですね。

140 氏名 笠倉 まゆみ
遠山にかすかな声や花曇

142 俳号 Tetsuko Terasawa (寺澤哲子)
二階より軽き靴音花曇
☆灰汁を抜く水のゆらぎや花曇

「ゆらぎ」がとにかくいい。水面に空がしっとりと映っていそうです。

145 俳号 大久保恭子
花曇紙飛行機は椅子に落ち

146 俳号 下總和沙
花曇まどろみに浮く椅子一つ

148 俳号 長澤きよみ
☆鳥の名の駅に人待つ花曇
ひばり、つぐみ、からす、すずめ……想像力を刺激してくれる句です。友といわず「人」にした、その素気なさもいい。
養花天ギター教室ひつそりと
花曇タワーマンション屛風めく

149 氏名 小林 真寿美
田楽や風の歌うを聴きながら

150 俳号 ゆうだち
☆手術後の子犬と歩く花曇
何か、障害か病気を持っていたのでしょうか。手術に耐えたけなげさがちょっと切ない。
養花天風に名前をつけてみる

151 俳号 高島實子
田楽や暖簾をくぐる金曜日

152 氏名 藤原 克敏
花曇魁夷の杜に一休み

154 氏名 中濱 広子
花曇坂道歩く親子かな

156 氏名 谷脇 照美
花曇きょうだい揃う法事かな

160 氏名 竹村 正広
火山灰吹き上げてなお花曇

162 俳号 濱武由美子
みどり児の産声高し花曇
産声の光あふるる花ぐもり

163 氏名 寺島 裕之
歓声は誰のライブぞ花曇

165 俳号 おおもと文薫
仏壇のうすき埃や花曇

168 氏名 菅野 純紘
花曇廃炉の行方見通せず

169 氏名 澤邊 義典
花曇辞令に揺れる心かな
通勤の吊り輪の先や花曇

170 俳号 小野公柄
☆忘れずに吾が名呼ぶ姉花曇
おそらくはかなりのご高齢なのでしょう。しかし、あくまでも頭脳はクリア、嬉しい句ですね。

171 俳号 伴 めぐみ
花曇顔出して父母喜ばせ

175 氏名 藤川 知之
☆花曇米寿の母はのほほんと
「高齢になれば怖いものはない」とおっしゃったかたがいます。年齢を重ねたよろしさのある句です。
花曇畳の匂ひやわらぎて

176 俳号 木本天祐
☆花曇同じ菓子舗の袋提げ
「あら、あの人も同じ店の……」という気恥ずかしさといくばくかの連帯感。桜餅だったらより楽しい。

178 氏名 久保田 弘子
花曇目にやわらかく山並は

179 俳号 川端日出子
廃校の母の学舎花曇

180 俳号 にっこり月子
☆狛犬の永久に口開く花曇
「そういわれるとたしかに」と思ってしまう句。ただ、似た句も多そうですので、ご注意ください。

181 俳号 冨湖
☆ブラウスの刺繍くつきり花曇
思い切り晴れているよりもかえって凹凸の際立つ刺繍。素敵な発見があります。
立ち漕ぎの銀輪に風花曇

182 氏名 木村 裕子
☆花ぐもり順番を待つすべり台
いい子たちだな、と思わず感心してしまいました。列を乱すのもまた、詩になりますが。

184 俳号 N ICO
山羊に袖食まれし貴女花曇

185 氏名 千葉 明子
花曇手術を終えて息深し
失せ物を捜せてうふふ花曇

187 氏名 矢橋 徳子
花曇勝鬨くぐり東京湾

188 氏名 鈴木 康正
花曇風を感じて踏むペダル

190 氏名 小栁 美千代
花曇あと三日だけ願いけり

192 氏名 林 佐知代
子に会うて足取り軽く花雲

193 俳号 佳月
もう一周歩くか惑う花曇

194 俳号 加賀 靖彦
うたかたの宴結びたり花曇

195 俳号 春うらら
鉛筆を齧る窓ぎわ花曇

196 氏名 檜山 八穗子
☆春陰や今信号の青になり
厳しくいうと花曇とは違いますが、よくできている句です。
田楽の串の青さや山の茶屋

197 俳号 矢羽田 兎美
北岳のまだ真白くて花曇

198 俳号 脇田弥生
花曇路地をまわって豆腐売り

199 氏名 義久 福代
☆日本一長き吊り橋花曇
なんと恐ろしい橋。完全に晴れていないぶん、救いがあるといえなくもありませんね。

201 氏名 長谷山 美智子
花曇夫と歩んだ道遥か

202 氏名 横松 きよみ
兄弟の喧嘩何処へ花曇

203 俳号 佐登華
花曇長椅子に待つ診察日

204 俳号 山本五之三
☆花曇教科書を買う人の列
ちょうどそういう時期(時季)なのだな、とこの句から思いました。新しい教科書が匂ってきそう。
花曇みどりごを抱き無人駅

205 氏名 河崎 柳子
花曇もんじゃの店の立ち並び

206 俳号 水島五月
☆口紅を薄きに変へて花曇
曇っているから濃いものにするのではなく、むしろ淡いものにするという……ここに詩があります。空と同化しようとするこころ、というべきでしょうか。
無人駅ひときは広く花曇

208 俳号 田中多加代
恩師への手紙認め花曇
公園に独りぽつちの花曇

210 氏名 藤田 清美
花曇り川のせせらぎ耳にして

212 氏名 本間 勝
ぴいひょろと鳶舞い上がる花曇

213 氏名 髙 理恵
花曇りバス待つ老婆杖にぎり

215 氏名 山﨑 佳子
初めての制服を撮る花曇
手を繋ぎ正門くぐる花曇

217 俳号 鈴木美和子
花曇旗が揺らめく弁当屋

219 俳号 三和まこ
田楽や姉妹で偲ぶ妣の癖

220 氏名 林 和子
花曇トングの先に白い貝

222 俳号 百 博泉
前撮りの白無垢映える花曇

223 俳号 兵頭光子
☆花曇遠き電車の音近し
遠いはずなのに身近に感じる、それがこの時期の空の面白さ。聴覚に訴えたところがいいですね。

225 氏名 川喜田 千加代
☆花曇母を訪ねる三姉妹
それなりに年齢を重ねたであろう三姉妹。しかし、姉妹ならではの華やかさのある句です。

226 氏名 平田 和美
花曇母と座りしベンチに居て

227 俳号 富海善風
カンバスに絵の浮き立ちて花曇

228 俳号 高鍋春子
☆献立を紙に書き出す花曇
一族の会食でしょうか、わざわざ紙に書いたその日のメニューに会話が弾んだことでしょう。

229 俳号 えつこ
花曇り一枚羽織り目黒川

232 俳号 山﨑詩乃
読み差しの本持つて出る花曇
☆花曇少女の像に鳥の来て

永遠に動きを止めたかのような少女像。でも、小さな鳥が友達なのですね。ほろりとくる句です。

233 俳号 清水明浩
山頂の雪もわずかな花曇

236 俳号 縞錆
☆カフェオレに砂糖一つや花曇
砂糖を何も入れないのも寂しい、かといって二つでは甘すぎる。現代的な作品だと思います。

237 氏名 岡田 慎太郎
田楽や葵紋立つ宿場町
うたた寝の二、三十分養花天