講評 2026年7月

兼題「ソーダ水」「水着」

総評に代えて

〇何度も書いていますが、「草取」(草むしり、草引)は夏の季語です。その月の兼題とセットにして一句にするのはやめましょう!
〇「プール」も季語です。したがって水着とセットにすると句がうるさくなりがちです。「金魚」も季語です。見て涼し気なものは夏の季語になっていると思ってください。「遠足」も季語です(春)。冬の寒さが去った喜びゆえでしょう。
〇「涼し」は夏の、大きな季語です。他の季語と一緒に一句にすることは避けてください。
〇「ソーダ水」とラムネは別物です。混同している句がありました。また、蜜豆と混同した例もありました。
〇お酒を割るためのソーダは季語としては、さていかがでしょうか。たとえば、焼酎をソーダで割ったら、それは焼酎の句になり、ソーダ水の句にはなりません(注:焼酎は夏の季語)。
〇「ソーダ水」であり、「ソーダー水」ではありません。
〇競泳の水着、スポーツジムでの水着は季節感が薄れがちです。できれば、海や川など、アウトドアで着用すると、夏らしさが際立ちます。
〇水着というと、投句者の年齢から見て回顧の句が多くなりがちです。ここは思い切って、「今、着ている」ことにして一句詠んでみましょう。
〇添削をした句もあります。多くは中七の字余りを削ったり、語順を変えたりしています。
〇オノマトペ(きらきら、ぎらぎらなど)はカタカナではなく、ひらがなで書きましょう。そうしないと、句が子どもっぽく見えてしまいます。
〇「眩しむ」という言葉はありません。
〇絵手紙や絵に描いた季語は実物ではありませんから、季語としては扱われません。

櫂 未知子

1 俳号 和田正尚
眼下にて流れる雲やソーダ水

3 俳号 松本敬香
喫茶店向かい合わせのソーダ水

5 氏名 原 恵美
ソーダ水孫の笑顔の弾けけり

7 俳号 津島まあや
潮風に赤いパラソルソーダ水

8 氏名 江口 美代子
ソーダ水泡は小鳥のやうに舞ふ

9 氏名 元尾 ふさ子
海眩し白き水着が映えてをり

11 氏名 吉井 さえ子
しゅわしゅわと鼻を抜けたるソーダ水

12 俳号 伊予水鏡
水着着て海図を風に沖を見る

13 氏名 小谷 治子
ソーダ水長い手脚がよく似合ふ
☆ソーダ水長き手足を折りたたむ

まことに今どきの若い人らしさがあります。下五が面白い。

16 俳号 下總和沙
白日夢めきて泡消ゆソーダ水
ストローに陽の落ちてゆくソーダ水
水着の黄たちまち海に花ひらく

18 氏名 古賀 佐智子
水着脱ぎ体に残る波の揺れ

19 氏名 星野 茂美
移り行く星空眺むソーダ水

20 俳号 都茂乎
ソーダ水乙女心にひとしずく

21 俳号 渡辺 葉月
初恋の人の白髪よソーダ水

22 俳号 西野悦入
ソーダ水ピカソの青はどんな青

25 俳号 西山レモン
競泳の水着の進化どこまでも

26 俳号 千羽
水着干す潮の匂ひに旅終はる
水着干す家に潮の香ありにけり

27 氏名 今城 照子
空いっぱい夢がはじけてソーダ水

28 氏名 中村 喜己枝
花咲ける海の入り江の水着かな

29 俳号 古田 啓
水着着て大空翔けるいざ青春
ご褒美に母と飲みしはソーダ水

30 氏名 石原 佐和子
ソーダ水昔のカフェでひとり待つ

31 氏名 村松 みゆき
紺水着吾子の伸びたる手足かな

33 俳号 木本天祐
ソーダ水グラスを通す光あり

34 氏名 岡村 典子
大会の次へ弾みのソーダ水
外つ国へ水着忍ばす旅鞄

36 氏名 中野 尋恵
水着着て泳げぬ吾は波遊び

38 氏名 山本 厚子
デパートの回転木馬ソーダ水
残照にソーダ水置く上高地

39 俳号 右陣平
園児らの駆けっこ済んでソーダ水

42 俳号 金坂千位子
ソーダ水みつけてほしいかくれんぼ
☆十八は子供だつたわソーダ水

では、今は?後日譚も続けて読みたくなる作品ですね。

43 俳号 瀬戸の風
ソーダ水ひかりの粒を連れて来ぬ
水着乾くまぶしき風を欲しいまま

44 俳号 水間水仙
ベランダに夜通しかかる水着かな
ソーダ水ポニーテールが揺れる君

46 氏名 松川 しのぶ
泳げずも水着姿で波を待つ

47 俳号 小西博子
浜辺には花壇のような水着たち
☆不思議だなモデルの水着買ったのに

広告に出ていたモデルの水着なのか、それともモデルというよりマネキンの着用していたものか。「あれ?」という残念さが何とも楽しい。

48 俳号 西村せつ子
色文字の看板まぶしソーダ水

50 俳号 幸空
ソーダ水グラスの中は宇治の空

51 氏名 木村 絢子
ソーダ水何も語らず泡を見る
潮風に青きを見つめソーダ水

52 氏名 松本 啓子
ソーダ水乙女心も真っ盛り

54 俳号 髙田政子
ソーダ水泡を目で追い人を待つ

55 氏名 堀江 春代
水着着て跳ねる娘の眩しさよ

56 氏名 小林 茂之
☆夕刊に間のある時間ソーダ水
一応は午後ではあるけれど、夕刊が来るには早すぎる、そんな中途半端な時刻の手持ち無沙汰をよく描いている作品です。
紺碧の空へ傾けソーダ水
☆分校の廊下を渡る水着かな

分校だからいいのですね。本校ならばちょっと恥ずかしくてこういうことはできないかも。場所の設定が大変巧みです。

57 氏名 北村 貞子
空の青どこまで青しソーダ水
旅をしてつきぬ話とソーダ水

61 俳号 杤尾まほ
海鼠壁の民宿に干す海水着
砂残る蛍光色の水着かな

62 俳号 浦嶋和子
再試験気を取り直しソーダ水

63 俳号 長岡純子
外国語のはじける笑顔皆水着

64 俳号 仁極残
あの雲のただ歪むだけソーダ水

65 俳号 志方早葉
ソーダ水泡を見つめる姉妹かな
脱衣所へ水着のしずく線を引き

66 氏名 疋田 ちづ子
初デート小さき声でソーダ水
新しき水着に名札縫いし母

67 氏名 小田川 浩三
ストローの音に気を留めソーダ水

69 俳号 冨湖
ソーダ水星の瞬き増えゆけり
☆夫も吾も白髪増しぬソーダ水

何年ぶりかはわかりませんが、懐かしきソーダ水を間において向き合った夫婦。一つの季語が歳月を超えた物語を見せてくれそうな句ですね。
半世紀ぶり水着選びて空青し

71 俳号 梓 初音
☆旅先の深きソファーやソーダ水
……そして立ち上がるのに難儀する、と。建て替え寸前の温泉ホテルを想像すると楽しいかもしれません。

72 俳号 根岸
女組の水着まとめし旅支度

74 俳号 塩田みどり
ソーダ水今は大人の味がする

75 俳号 白房
貝殻を見せに走り来海水着

78 俳号 聖子
木の枝に水着を干して合宿児
水着あとくっきりと出で湯の姉妹

79 俳号 あらら
水着買うやっぱり何時も同じ色

80 氏名 南 功治
ソーダ水グラスの先は畝傍山

81 俳号 伊藤京子
すぢ雲に夕日が溶けてソーダ水

83 俳号 寺崎紅花
750ccの渦巻く風やソーダ水
うつむくやうなじの白き初水着

84 氏名 木村 裕子
四国へと向かふ船旅ソーダ水

85 俳号 橋本千蓼
わが町は名水自慢ソーダ水

86 俳号 稲川 優子
ソーダ水片目で覗く水族館

88 俳号 徳永恵楓
かん高い声が弾けるソーダ水
新水着泳ぎ上手になりそうな

90 俳号 祐叶
癖になる温泉母とソーダ水

91 俳号 智裕
窓の外見つめる午後のソーダ水

92 俳号 林美智子
孫は青我はクリームソーダ水

93 氏名 長松 素子
部活生のバッグ大きくソーダ水
好きな子も嫌な子も居てソーダ水

94 俳号 城下早苗
☆しゅっぱーつ家族の水着積み忘れ
これは笑えます。目的地に到着後の修羅場を想像するともっと笑えます。

95 俳号 細川京子
ときめきが泡の数だけソーダ水
一人っ子クリームソーダ持て余し

96 俳号 十勝晴尋
☆渚ゆく黒の水着は眩しくて
黒いのに眩しい。映画の一シーンのようで、印象的な句です。周囲を圧倒する存在感をもった、女優のようなひとを思い浮かべました。

97 俳号 輝輝
市民プール空とたわむれ海水着

98 氏名 小野 千早子
初恋を知る由もなくソーダ水
水玉の空にはじける水着かな

99 俳号 おおもと文薫
ソーダ水泡をくるくる一年生

100 俳号 田中恵子
水平線きらきら光るソーダ水

101 氏名 中村 和子
カンヴァスの青を映してソーダ水

102 俳号 植田良穂
娘らのぷかぷか遊ぶソーダ水

103 氏名 満田 純代
ソーダ水夢に誘ふ気泡かな
波追うて水着の背中熱くなり

104 俳号 文月詩架
水滴を指でなぞったソーダ水

106 俳号 三貴子
サッカーは試合終了ソーダ水

108 氏名 森下 須美子
そばに居てただありがたきソーダ水

110 俳号 伊崎宏子
淡き思い告げる事なしソーダ水

111 俳号 渡辺礼子
息切らしひと言「ごめん」ソーダ水

112 俳号 高橋昌
ソーダ水部活帰りの笑い声

113 俳号 みーたま
ソーダ水夕焼け空に明日の夢

115 氏名 穴繁 惠美子
ソーダ水流したような空と雲

117 氏名 吉田 鈴子
瀬戸内の島々眺めソーダ水

118 俳号 長澤きよみ
時代物の大時計鳴るソーダ水

119 氏名 伊藤 美子
魚になる老若男女海水着
部活後の体に染みてソーダ水

120 俳号 椎木 雅子
水着着て空を見上げる日曜日

122 氏名 平田 和美
若さとは弾けるものよソーダ水

123 俳号 山﨑詩乃
ソーダ水このまま溺れてしまいたい

124 俳号 雅月
媼とて秘めし恋ありソーダ水

133 氏名 黒岩 雅弘
夢に見た憧れの味ソーダ水

134 俳号 中田スミエ
水着の子砂を蹴りつつ波に入る
ソーダ水ひとひらの雲飲み干さん

137 俳号 脇田弥生
波のまにまに赤や黄の水着かな

138 俳号 かさくらまゆみ
手を挙げて友と同じくソーダ水

140 俳号 川端日出子
職場より離れし店でソーダ水
☆父母でなく男と女ソーダ水

付き合い始めた遠い昔の場面に戻ったということなのでしょうか。男と女、ちょっとどきっとします。

141 氏名 駒木 典子
犬もゐる浜の清掃ソーダ水

142 俳号 菅野純紘
ゆっくりのペース身に染むソーダ水
方言の丸出し仲間ソーダ水

143 氏名 中濱 広子
水着着て木陰で休むシニアかな

144 俳号 柴田康子
青春の思い出ひとつソーダ水

145 氏名 藤原 克敏
水着干すサルバドールのホテルにて

148 氏名 澤邊 義典
陰干しの水着に風のそよそよと

150 俳号 田中和敬
戯れて笑顔こぼれるソーダ水

151 俳号 Tetsuko Terasawa (寺澤哲子)
☆水着きて今日の彼女は絶好調
俗な詠みぶりが楽しい句。ただ、一度だけしかできないやり方ではあります。
ソーダ水小さな嘘も泡になる

153 俳号 齋藤弘子
冷やっこい二人の瞳ソーダ水

155 俳号 田邊法子
つらつらと自照の夜のソーダ水
水着の子駆け出す未知の海青し
☆水着着て浜辺にぎわす一人かな

たったひとりなのに周囲をいきなり華やかにしてしまう人がいます。地味な表現をしていますが、登場人物同様、存在感のある句ですね。

156 氏名 嘉陽 恵美子
歳重ね水着の前を素通りす

157 俳号 佐藤嘉津雪
ソーダ水泡が弾ける宇宙かな

159 氏名 青木 豊江
おとなしくなりし弟ソーダ水
山よりも海が好きよとソーダ水

162 俳号 高島實子
ソーダ水兄弟姉妹旅立ちて

163 俳号 百 博泉
海上の船の灯りよソーダ水

164 俳号 大久保恭子
岩を打つ波の光りて海水着

165 俳号 富永美智子
青空を見上げぐぐっとソーダ水

166 氏名 桑原 堆子
子の泳ぎ母も水着で真似てみる

167 氏名 檜山 八穗子
ご褒美は海の色したソーダ水
初めての水着はなんと小さきこと

168 氏名 小林 真寿美
☆ソ―ダ水きのうの喧嘩許しをり
それほど深刻な喧嘩ではない――ソーダ水ですから。季語がよくはまっています。

170 俳号 二人静
ひと仕事ひと息ついてソーダ水
ぎらぎらの太陽背にし水着かな

171 俳号 NICO
立ち寄った図書館帰りソーダ水

173 俳号 副彩
ソーダ水きらきらしてる銀河粒

174 氏名 千葉 明子
老夫婦しばし無言のソーダ水
笛ひとつ水着の列の動き出す
窓際のひかり集めてソーダ水

176 氏名 寺西 静枝
隣町通りすがりのソーダ水

178 氏名 田邉 智子
影二つソーダ水持ち母を待つ

182 氏名 西 義信
何語る小さき泡らソーダ水
まだ似合う鏡と語る水着かな

183 俳号 小野公柄
水着着て肩の抜けたる軽やかさ

184 氏名 瀧谷 優子
初恋や向かい合わせのソーダ水

185 俳号 鈴木美和子
円卓の話題広がるソーダ水

186 俳号 寺島裕之
水着の子一本道に影が伸び

187 氏名 小野 幸代
水着着て貝殻拾う垣生の海

189 氏名 岡田 昌代
ソーダ水泡の向こうに希望の子

190 氏名 林 佐知代
待ち合わせ少しずつ飲むソーダ水

193 俳号 久保田弘子
登校の児ら一列に水着持ち

195 俳号 春うらら
ソーダ水小さき親ゆび父と似て
☆売り切れの星座みくじやソーダ水

昭和の喫茶店には硬貨を入れて取り出すおみくじが必ず置いてありました。なんとも懐かしく、タイムスリップしたくなるような句です。

197 俳号 水島五月
思ひ出のひりりと痛みソーダ水
☆水着着た子ら小走りに別荘地

内陸の別荘地だと考えると面白い。プールか川かはわかりませんが、子どもらのはやる気持ちが大人にも伝わりそうです。
喉白く飲み干しておりソーダ水

198 氏名 山﨑 寿史
散歩道ふとほしくなるソーダ水

200 俳号 赤峰ゆふだち
仰向けにふうはり浮くや水着の児
遠山に真白き雲やソーダ水

202 俳号 飯田朱美
懇談を終えて吾子とのソーダ水

203 俳号 山本五之三
☆荷物番水着の母は島育ち
いざとなればすぐにでも海に飛び込める母親なのでしょう。島育ちがいいですね。
屋上にカレーの匂ひ水着干す
テーブルに葉影の揺れてソーダ水
☆イヤホンは無音のままでソーダ水

イヤホンを着けてはいるけれど、実は何も聴いていない。その物憂げな感じがいいなと思いました。

204 氏名 小谷松 直子
今週は夫連勤ソーダ水
訪ね来し根岸の店のソーダ水

205 俳号 城 直
年老いた母の水着のぴったりと

206 俳号 長尾笑元
親子してクリームソーダ河原町

207 俳号 田中多加代
ソーダ水グラスの向こう海を見る

208 氏名 坂口 欽二
浮き輪の児見守る母の水着かな
浜に来て海に入らざる水着かな

209 俳号 高鍋春子
ほっとする昔の色のソーダ水

211 俳号 大樹佐保
湘南へ通いし水着色褪せぬ

213 俳号 難波和代
☆来世に楽しみ残す水着かな
実は評をしにくい句でして……ただ、かなり大胆な水着なのでしょうということはわかります。

214 俳号 縞錆
ソーダ水午後の時計を進めしむ
☆生命を閉じ込めている水着かな
上五の大げさな感じが効果的でした。

216 氏名 河崎 柳子
☆ソーダ水卓を綺麗に拭きにけり
ソーダ水そのものではなく、それを置く前の食卓を整えたという。これからまた、水滴が垂れますから。こういう何気ない動作も俳句の素材になる例ですね。
水着よりにょきにょき手足生えにけり

217 氏名 植森 恵美子
水着着て海に入るを躊躇せり

220 俳号 根笈知佐子
空は青海も青くてソーダ水

224 俳号 清水明浩
湖面にて水着漂い水しぶき

226 俳号 橋本純子
ソーダ水グラスに映る光る海

227 俳号 カモミール
端布めく水着の包む肌眩し

229 氏名 伊木 秀明
ストローを二本差してるソーダ水

230 俳号 きよちゃん
水着干す大中小の旗のよう

232 俳号 富海善風
☆水着とは濡らすものではないらしく
浜辺で爪でも磨いている若い女性を描いたのでしょうか。ちょっとユーモラスで楽しい。

235 氏名 小栁 美千代
流行に遅れを取りし水着かな
青海と一つになりぬソーダ水

238 氏名 前原 由美子
肩上げし紺の水着よ母の手よ

239 俳号 矢羽田 兎海
☆文字盤の向こうで揺れるソーダ水
時計などの文字盤の向こうで波打つソーダ水。小さな遠近法と呼ぶべき面白さがあります。

240 氏名 松﨑 亜矢子
微かなる音に魅かれてソーダ水