講評 2024年10月
兼題「芒(薄)」「花野」
添削してから頂いた作品もあります。
1 氏名 川 智貴
照り渡る太陽のもと薄原
3 俳号 西山レモン
☆かくれんぼしたくなるよなすすき原
童心を呼び覚ます一句ですね。こういった作品をどんどん読んでみたくなります。
8 俳号 塩田みどり
☆花野きて優しき顔となる夕べ
正確には「花野をきて」「花野にきて」でしょうか。この季語のよろしさを生かした句です。
9 俳号 山﨑詩乃
ふれてみる芒の絮のかすかなる
北の鉄路そこここの芒かな
10 氏名 岡田 慎太郎
通学の子どもら包む芒かな
11 氏名 堀江 春代
黄昏やすすき頼りに寺参り
12 俳号 雨堤おふさ観音
ローカルの車窓に続く花野かな
14 俳号 薩摩乃甘藷
熊鈴を響かせ歩く花野みち
15 俳号 浦崎まゆみ
空焼けて黄金色の芒かな
16 俳号 志方早葉
茅葺きに運ぶ背丈の芒かな
18 氏名 百留 博子
芒ごし空を流れるほうき星
19 俳号 にっこり月子
芒原鳥二羽出たり入つたり
20 俳号 山本五之三
世の風があたるフレーム芒原
21 俳号 矢羽田兎海
すすき原泳ぎ疲れて吾子眠る
22 俳号 神宮寺ゑん
墓参り終えて芒に見送られ
23 俳号 水島五月
☆甲斐犬と翁の渡る花野かな
つまりは、「山梨の犬をおじいさんが散歩に連れ出している」というだけの内容なのですが、五七五の定型にきっちりおさめるとカッコよくなるという例でした。
花とてもそれぞれで良し垂れ芒
27 氏名 澤邊 義典
岸壁に咲くひと群のすすきかな
30 俳号 鈴木美和子
威厳ある芒の群れに見送られ
32 俳号 津島まあや
雨上がり色濃く浮かぶ花野かな
33 俳号 川端日出子
ふはふはの大地うごめく芒原
35 氏名 矢橋 徳子
芒生ふ一乗谷の清流に
36 俳号 田中多加代
花野往く小学校へ続く道
37 氏名 髙 理恵
とりあえず一升瓶に花芒
39 氏名 西野 悦子
一叢の芒の影や街路灯
40 氏名 藤原 克敏
静まりし清正井(きよまさのいど)すすきの穂
☆縄文のいのちが眠る花野かな
頭でつくった感もありますが、中七のある種の切なさは捨てがたい感じがありました。
41 俳号 小西博子
子ども等のかくれんぼせる花野かな
42 俳号 桜井伸
☆夕暮をいそがせてをり芒原
実際にこういったことはないのですが、そう感じられたことをしっかり一句にされました。
44 氏名 秋山 久美子
曇天や吾子走り行く花野道
45 俳号 Tetsuko Terasawa
☆芒ゆらし見つけて欲しいかくれんぼ
いい句だと思いました。動詞が多すぎるのがちょっと残念でした。
46 氏名 本間 勝
花野越えパラグライダー旋回す
48 氏名 笠倉 まゆみ
花すすき出逢ひて友と成りにけり
49 俳号 佐登華
とぼとぼとわんこと共に花野ゆく
50 氏名 長岡 純子
夫と子のはじけし声や大花野
51 氏名 駒木 典子
ぐずる子を連れてそぞろの花野かな
ランドセルに芒を挿して五六人
53 俳号 北見薄荷
猫二匹すすき揺らして駆けてゆく
54 氏名 林 佐知代
夫と行く曽爾一面の芒かな
彼の国へ迷い込みそな芒かな
55 俳号 梓小雨
バスを待つ列に芒が三つ四つ
56 俳号 富士英明
夕暮れの芒の原に鹿の声
57 俳号 細野みすず
応援の芒そよそよ無人駅
58 俳号 前田 椛
薄ゆれ夫と見上げるビッグムーン
59 氏名 屋形 雅代
花芒猫が一匹背伸びする
63 氏名 久保田 弘子
夕暮れの薄の空の一番星
64 氏名 穴繁 惠美子
☆神霊が宿りてそよぐ芒かな
「もしかしたら、そういうことってあるかも」と思わせてくれる作品です。楽しい。
65 氏名 岡村 典子
花野径光やはらに母歩む
66 氏名 古賀 泰孝
ゆらゆらと風のささやき芒の穂
69 俳号 山城翔雲
妻と来し一筋の道花野かな
70 俳号 涼風雅
芒野や自転車かごの犬立ちぬ
71 俳号 はるうらら
先生と呼ばれ恥ずかし芒かな
73 俳号 柳光 みかづき
宍道湖の寄波見ゆる花野かな
74 俳号 植田良穂
母の忌やすっくと立ちし花芒
75 俳号 長澤きよみ
小流れのふいに開ける大花野
77 俳号 すみえ
川沿いの芒を包む夕陽かな
78 俳号 伴 めぐみ
窓越しに芒招くや夜空澄み
79 氏名 吉田 鈴子
退院の安堵の中を花野行く
82 氏名 星谷 絹代
手をつなぐ初老の二人花野径
83 氏名 小田川 浩三
自転車のペダルも軽く花野かな
84 氏名 小林 茂之
縄文の人も歩きし花野かな
花野より出でて花野へ単車両
☆日の暮れて月の芒となりにけり
まことに美しい作品。声高ではないのに、華やかさがあります。
85 俳号 案山子
潮風に心も開く花野かな
86 氏名 千葉 明子
芒見て大事なことを思い出す
87 俳号 寺崎美知恵
川光りそよぐ薄や風の中
89 氏名 田邊 法子
☆手折りたる夕日まみれの花芒
中七がとにかくきれい。言葉のバランスのよい一句でした。
人を容れ花野に刻の生まれけり
93 俳号 根岸さち
手を取りて花野の奥の奥までも
95 氏名 疋田 ちづ子
慰霊碑のそばで寄り添う芒かな
鳥あそび花野道ゆく夫婦かな
100 氏名 細川 京子
一両の汽車が行く土手芒の空
103 氏名 横松 きよみ
自転車の風が薄の穂を揺らす
105 氏名 檜山 八穗子
沿道で手を振る如き芒かな
亡き人と語らい歩む夕花野
106 氏名 西 義信
あぜ道の何と愛しき花野かな
108 俳号 杤尾まほ
芒波分け単線のひびきけり
110 氏名 南 功治
芒揺れ何かを語るたれか見ゆ
114 俳号 輝輝
遠ざかる雲を見ながら花野道
花野風ひとつ大きく深呼吸
120 氏名 畑畠 美千代
わが家から見える芒の姿なり
122 俳号 二人静
☆秋吉の風にゆれたる芒かな
芒が揺れる句はたくさんありましたが、この句はとにかく地名がよく生かされています。
124 氏名 星野 茂美
茜空ゆれる芒をうちながむ
125 俳号 柿崎つよし
夕暮れの道にそびゆる芒なり
126 氏名 財津 光明
火の山の裾をとりまく花野なり
129 氏名 山本 厚子
うちなびく芒の原に薄暮かな
130 俳号 渡辺
そこはかとなく紫の花野かな
花野行く素直な顔になつてきし
131 氏名 小谷 治子
芒野やわが裡に棲む大宇宙
132 俳号 進藤桂兎
老いてこそ手をとり歩く花野径
133 俳号 沈香花
夫の背に四方八方芒かな
136 氏名 白石 モリエ
穂先より光入りたる芒かな
全体評
芒と花野。よく似ていますので苦労されたかたが多いのではないかと思われます。その中で、ちょっと独自の詠み方をされたかたを高く評価しました。惜しかったのは、音数のかぞえ間違いと思われる作品が多々見られたことです。原点に立ち返り、丁寧に自作を振り返ってみてください。