講評 2025年9月
兼題「星月夜」「運動会」
総評に代えて
〇一字か二字違うだけの句を何句も投句するのはやめましょう。きちんと推敲してから、です。
〇分かち書き(一字あけをすること)は避けましょう。俳句は標語とは異なります。
〇運動会の句は昔をひたすら懐かしんでいたものが多かったようです。季語はなまものです。できるだけ現在にひきつけてください。
〇季語としての運動会は秋季に決まっていますので、わざわざ「秋」を付ける必要はありません。
〇運動会といえば、靴・靴下が目印という句がとても多かったですね。
〇星月夜といえば宇宙……という発想はもうやめましょう。さんざんやり尽くされてきましたので。
〇星月夜に「かがやく」もしくはそれに類する表現は不要です。もともとその意味が入っている季語ですから。
1 俳号 和田正尚
歓声の空に昇りし運動会
飛火野の草の香りや星月夜
5 氏名 吉井 さえ子
星月夜心澄みゆく二人かな
7 俳号 山城翔雲
星月夜流れゆく雲輝きぬ
9 俳号 小平笑夢
☆はちまきの寄せ書きにじむ運動会
責任重大、といったところでしょうか。何ともいえぬ臨場感のある句です。
10 氏名 小谷 治子
星月夜小さき城下寝しづまり
18 氏名 飯田 朱美
星月夜童話の国へひきこまれ
20 俳号 岡田隆美
倉敷へ息子に会いに星月夜
21 俳号 渡辺葉月
ちちははと交信したき星月夜
星月夜ギリシア神話の広ごれりり
22 俳号 城下早苗
来し方を夫と語りし星月夜
24 俳号 福嶋美智子
星月夜逝きし彼の方偲びつつ
25 氏名 山本 厚子
二百字に日記したため星月夜
26 氏名 長松 素子
☆土手の草ひんやりとして星月夜
空のことを何もいわず、足元の草に集中したところが素晴らしい。
28 氏名 星野 茂美
草原の川の流れに星月夜
30 俳号 岡本清髙
指絡め鶴の港や星月夜
31 氏名 西野 悦子
婦人会の踊りもありて運動会
32 俳号 松本真智子
親子してパン食ひ競ふ運動会
40 氏名 岡本 真苗
星月夜優しき心すみとおる
42 俳号 慶子
夫の待つ家に向ひて星月夜
45 氏名 吉原 昭子
星月夜風を受けたる草の波
46 氏名 瀧谷 優子
赤勝てと声を限りの運動会
51 氏名 中野 尋恵
与え合う運動会の昼食時
52 俳号 千羽
星月夜ひとの夢路を照らしけり
54 俳号 古蔵 花音
星月夜われも宇宙と一つなり
56 氏名 木本 和子
運動会母のおにぎり俵形
☆星月夜夫の横顔右が好き
これは楽しい句。右側の顔に惚れ直したということなのでしょう。ロマンチックになりすぎなかったところがいい。
57 氏名 小野 幸代
ただよへる雲の間に間に星月夜
子らの汗輝きてみる運動会
58 俳号 文月詩架
星月夜ひと駅先へ歩きたる
突風に吹き飛ぶ旗や運動会
61 俳号 金坂千位子
パックして後は寝るだけ星月夜
星月夜夫と旅する竹生島
63 俳号 我楽
カーテンを半分開けて星月夜
☆張り紙は臨時休業運動会
地域をあげて学校の運動会を支えようとする意気込みが感じられました。
66 俳号 野原
運動会マイクの声の遠くから
67 氏名 楠本 行孝
星月夜ペダル踏みしめ家路かな
68 俳号 瀬戸の風
星月夜うしろ姿に嘘ひとつ
泣きながら勝ち名乗りする運動会
69 氏名 疋田 ちづ子
朝ごはん卵おまけの運動会
70 俳号 津島まあや
石垣のロマンチックな星月夜
71 俳号 根笈知佐子
運動会靴紐結ぶ小さき手
72 氏名 松本 啓子
運動会最後の力ふりしぼり
73 俳号 西山レモン
黒い足白い靴下運動会
バス停で娘待つ母星月夜
74 俳号 正原悦子
運動会手を振りながら走る孫
76 俳号 高島實子
ひとり居に夢いただけり星月夜
☆星月夜郷の吊り橋揺れにけり
派手さはありませんが、かすかな不安が感じられ、ユニークな句です。
78 氏名 北村 貞子
室外機の音止みし頃星月夜
79 氏名 岡村 典子
またたきをまばたきもせず星月夜
たらちねの母の手細き星月夜
81 氏名 小林 真寿美
飛行機に手をかざしたる星月夜
運動会空ゆく雲も浮き立ちて
83 俳号 杤尾まほ
巻戻しきれぬ時計やほしづくよ
☆運動会砂にまみるる片想
まだ幼い子にも幼い子なりの恋があるのでしょう。運動会の句として珍しい内容です。
85 俳号 浦嶋和子
どの人も天使に見ゆる星月夜
☆運動会応援団を応援す
応援団の句はほかにもありましたが、まさか、このパターンに出合うとは思っていませんでした。
87 氏名 冨田 敦子
林間の伝言ゲーム星月夜
89 氏名 畑畠 美千代
勝手口開けて見上げる星月夜
90 氏名 細川 京子
星月夜ほどよく酔ひて夫と居て
92 俳号 小西博子
星月夜吾にもあるかあの光
93 俳号 塩田みどり
年下の友を送りし星月夜
97 俳号 案山子
抜かれても母に手を振る運動会
98 氏名 中濱 広子
星月夜バッグを置いて立ち止まる
100 俳号 根岸さち
星月夜移住の友と繋がりぬ
101 俳号 秋乃雫
星月夜子を宿す身の遠さかな
真っ赤なる靴下走る運動会
102 氏名 小林 茂之
運動会我が子賞品係なる
本陣も脇本陣も星月夜
☆産土を囲む楠星月夜
たくさんの星が出ているとはいっても、ネオンのように煌煌と……とはいきません。そんな地方のありようを楠の樹影で描いた立派な作品です。
104 氏名 小野 千早子
遠くにも響く声あり運動会
105 俳号 輝輝
老いの身に体育祭の回覧板
106 氏名 金野 佳子
運動会手を振り走る我が子かな
107 氏名 笠倉 まゆみ
コテージの天窓ひらく星月夜
108 俳号 にっこり月子
手の甲の皺なでてみる星月夜
糯米を三合測る運動会
109 氏名 木村 絢子
高三の仮装にかける運動会
110 氏名 星谷 絹代
手をつなぐ母さがす子や運動会
112 氏名 吉田 鈴子
星月夜ジャズ流れくる港街
芝居撥ね余韻深むる星月夜
115 俳号 水間水仙
父並ぶ校門開き運動会
駅で待つ大きなリュック星月夜
118 俳号 村松みゆき
運動会母のあげ寿司おおきくて
119 俳号 長岡純子
それぞれの子らを見送り星月夜
120 氏名 松川 しのぶ
星月夜父と腕組み家路かな
122 氏名 辻井 裕子
一人居の窓まで聞こゆ運動会
123 氏名 岡本 みゆき
夜明けから弁当作る運動会
124 俳号 大久保恭子
☆バトン持ち運動会の地面蹴る
下五に躍動感があり、感動しました。
126 氏名 山﨑 三十子
星月夜眠れる街に靴の音
131 氏名 田邊 法子
星月夜全室灯す巨船航く
☆母じっと香聞きをりし星月夜
お香を聞くことで、母上は精神の安寧を得ているのでしょう。静かなよき作品です。
アンカーに総立ちしたる運動会
132 氏名 比嘉 啓文
青空に転んで泣いて運動会
運動会声援ふたつ重なりぬ
138 氏名 檜山 八穗子
彼のひとの歌声きこゆ星月夜
142 俳号 鈴木美和子
全身を静かなる風星月夜
修繕の黒幕照らす星月夜
143 氏名 財津 副代
はちまきを忘れし家へ運動会
144 俳号 二人静
青空に運動会の汗光る
145 氏名 木村 裕子
星月夜無人駅からひた走る
147 氏名 林 美智子
母と立つ豪州の空星月夜
151 俳号 北見薄荷
星月夜時計の針はどこを指す
152 俳号 屋形雅月
波静か猫もまつわる星月夜
153 俳号 徳永恵楓
星月夜指の先まで深呼吸
154 氏名 青木 豊江
☆雲を追ふ雲のはやさや運動会
弁当や競技から離れ、空に視点を移したことで、おおらかな雰囲気が生まれました。
身ぬちにも鼓動の不思議星月夜
159 俳号 長澤きよみ
星月夜道祖神まで行くことに
☆運動会みんな触れたき万国旗
おそらくは今はもう無い国の旗も混じっているのでしょう。子の好奇心が楽しい句。
161 氏名 横松 きよみ
お隣の弁当覗く運動会
166 俳号 聖子
呆けたる姉と茶を飲む星月夜
ぶら下がるパン大揺れや運動会
168 俳号 十勝 晴尋
星月夜羽ばたくコタンコロカムイ
170 俳号 小野公柄
運動会憧れのひと応援す
171 俳号 Tetsuko Terasawa (寺澤哲子)
思いきり短髪にして運動会
174 俳号 百 博泉
里山に篠笛響く星月夜
176 氏名 寺内 揚子
大空へ両手広げる運動会
179 俳号 伊崎宏子
わが子より父本気なり運動会
181 俳号 伊藤京子
何度でも白線引きて運動会
182 俳号 加賀 靖彦
運動会肩身が狭い万国旗
183 氏名 久保田 弘子
☆星月夜列車すぎては静かなり
今では少なくなった夜行列車。あるいは貨物車なのかもしれません。寝静まった感じがよく出ています。
白檀の香りふとして星月夜
185 氏名 穴繁 惠美子
長年の思いに気付く星月夜
187 俳号 富海善風
☆おむすびが運動会を連れて来る
これは楽しい句。読んで思わず微笑んでしまう作品です。ときにはこんな大胆な発想もいいものですね。
188 俳号 ゆうだち
奥多摩の藪黒々と星月夜
189 俳号 三貴子
目印は靴下の赤運動会
190 氏名 駒木 典子
読み聞かせ終われば外へ星月夜
滔々と四国三郎星月夜
192 俳号 白尾恵子
おむすびを作り過ぎたる運動会
193 俳号 紅花
お隣のえびふらい視る運動会
おんぶして泣き止みにけり星月夜
194 俳号 足立菊子
運動会子の目印は赤い靴
195 俳号 美紗
運動会入場門に孫さがす
196 俳号 おふさ観音雨堤
編みかけのベスト取り出し星月夜
197 俳号 七宝猫
星月夜ひらく絵本に広がりぬ
199 氏名 西 義信
母の背のいと懐かしき星月夜
200 氏名 雪竹 澄子
青みかんかおりくる昼運動会
202 俳号 伴 めぐみ
波のごと歓声響く運動会
203 俳号 國井あき
星月夜小銭で買えぬ缶コーヒー
204 氏名 藤川 知之
野良仕事とおくピストル運動会
205 俳号 波多野由加
万博も運動会も予約済み
207 氏名 矢橋 徳子
動かざるヘリの灯も星月夜
210 俳号 桜井 伸
自転車で塾から帰る星月夜
☆山々に青空ありぬ運動会
それぞれの山が抱く青い空。悠悠たる雰囲気があり、大きな景をもたらしてくれました。
212 俳号 川端日出子
村人は早寝静まり星月夜
213 俳号 橋本千蓼
幼子の父母見て走る運動会
214 氏名 鈴木 康正
ひちりきか遠きしらべの星月夜
215 氏名 山﨑 寿史
運転会バトンタッチで風をきる
217 氏名 河崎 柳子
運動会応援席も小ぢんまり
218 氏名 植森 恵美子
風吹きてまたたき増すか星月夜
219 俳号 冨湖
うっすらと稜線浮かび星月夜
223 俳号 山本五之三
☆運動会小さき校庭小さき空
おそらくは都会の学校なのでしょう。そんな狭い場所でも必死に競技に取り組む子どもたちが見えてきそう。
白波の輪廻短し星月夜
224 俳号 佐登華
☆のんびりと砂場のバケツ星月夜
誰かが忘れていったバケツ。ものを描くことで俳句らしくなる、そんな王道を歩んでいる作品でした。
226 俳号 梓小雨
からころと下駄を鳴らして星月夜
230 俳号 西村せつ子
星月夜語らう姉の背丸し
232 氏名 本間 勝
重の蓋開けて嬉しい運動会
233 俳号 兵頭光子
ちちははの語り合う影星月夜
屋久島の海を抱くや星月夜
237 俳号 三和まこ
まなうらにいま立山の星月夜
239 俳号 水島五月
借り物のパーカー羽織り星月夜
スニーカーにわが子見分ける運動会
241 俳号 春うらら
何度でも生まれてくるよ星月夜
242 氏名 髙 理恵
運動会結び直した靴の紐
243 氏名 澤邊 義典
終バスの駅前走る星月夜
247 氏名 久都間 繁
運動会大樹に憩う紅白帽
249 氏名 岡田 慎太郎
そこばくのつば広帽や運動会
☆運動会うからやからのあつまれり
少し古風な言葉遣いが面白い句。ちょっと前の、一族総出の雰囲気があります。
250 氏名 谷脇 照美
運動会皆お揃いで見つからず
251 氏名 前原 由美子
重箱に海苔巻き並ぶ運動会
255 氏名 川喜田 千加代
悦びの数多降り来る星月夜
256 俳号 福田美雨
くつ下の色で見分けし運動会
258 氏名 堀江 春代
星月夜田舎の銀座通りかな
259 俳号 西田佳代
おにぎりが一番うまい運動会
260 氏名 小柳 美千代
つんのめる二人三脚運動会
261 俳号 山﨑詩乃
借り物を借りられなくて運動会
262 氏名 千葉 明子
星月夜夫と歩みし影法師
子らの声空にひびけり運動会
263 俳号 大樹佐保
花形の兄の威を借る運動会
